トゲトゲ

3年もいて、お世話になっておいて、なんだけれど、
この学校を出られて良かったと思う。

この間配られたPTAのプリントに、
学級懇談会の要約が載っていた。

　2年○組　由比先生
　・○○○○○○
　・○○○○○○

と、わたしの話したことが列挙してあったのだけれど、
ひとつだけ、言ったことと反対こことが書いてあった。

　「自分の仕事を責任を持ってできるようになった」

という感じで書いてあったのだが、
わたしは、

　「自分の仕事をできる子は忘れずにやってくれますが、
　　やはり確認をしてあげないと忘れてしまう子もいます。
　　親も教師も、子どものやっていることから目を離さず、
　　ときどき声をかけてあげることが大事ですね」

と言ったのだ。

全員がその仕事ができるようにはならなかった、と話したのに、
全員ができるようになった、とも受けとれる文面になっていて、
正直とまどってしまった。

できるようになった、と断言してしまっては、
わたしは嘘をついていることになってしまう。
けれどもこれはわたしが書いた文章ではない。
ところが文責が書かれていないうえに、
欄の見出しにはわたしの名前が書いてあるのだ。
つまりこの謝った文章の責任を負う人がわたししか居ないと言うことになる。

でも、わたしは書いていないのだ。

ということを、学年主任と話していたら、
学年主任が打ち合わせで教頭に質問した。
（ちなみに教頭はPとTの窓口である。）

他の先生方も、こういったプリントがでることを知らなかった様子で、
「作るなら教師側にも知らせて欲しいこと」
「印刷する前に確認したいこと」
を、教務・教頭に要求した。

ここからがまたおかしいのだ。

教頭は、Pの代表さんに、
「教師の中から苦情が出た」
と、電話をしたらしいのだ。

当然、教頭には了承を得ていた配布物なので、
Pさんも黙っていない。
今日学校へ文句を言いに来た。

職員室の片隅で、Pの役員さんと、教頭・教務が話し合っている。
既にPさんは怒気の含まれた声をしている。

「Pの配布物では、
　先生たちのお気に召すような内容を書かなきゃいけないんですか」

と来たもんだ。

教頭・教務はなんとか弁解する。

「いや、由比先生が言うにはですね…」

なんでわたしの名前を出すんだ！？

名前が出ているのに、知らないふりをするわけにも行かない。
仕方がないので、
「あのですね…」
と話しに行くのだが、
　・記述内容を確認したかった
　　（文責の所在や、
　　　他人の名前を出している以上その人間に確認をとるべきだ
　　　というわたしにとっては当たり前の常識）
というわたしからの要望の点と、
　・こういう懇談会のプリントは出さないで欲しい
　　（教頭・教務はPさんの言うこと聞きすぎだ）
という他の先生方の意見とがごっちゃになっており、
Pさんは折角やった仕事を
侮辱された
若しくは
先生（特にわたし）に否定された
と思っている様子だった。

とにかく、その問題の一文についてわたしが説明する間、
教頭・教務は口も挟まず下を向いていた。

人の名前出しといて、それはないだろうがよ！！

そもそも論点のずれているわたしとPさんの話がまとまるわけもなく、
かといって助け船を出してくれる人は
その職員室の全教員の中で一人もおらず、
教頭・教務のその表情からは（なんとか穏やかに収めたい）という、
いかにも事を荒立てるな的な雰囲気を読み取ってしまったので、

　わたしがいいすぎたことにすればいいか

と、正直思いました。

　もう辞めるし。

とも思いました。

　
　
　
わたしは、余計なことを言ったのでしょうか。
わたしたちが子どもの文章を使った印刷物を作るときには、
「これ印刷していい？」
と、確認をとります。
ましてや全校460人の保護者の目に触れる物を作るにあたって、
名前を入れておきながら一言もないというのは、
おかしいと思うのですけれど。

「Pの方がお伺いを立てるのではなくて、
　先生からも内容を訪ねてくれれば良かったのに」

って、
だからそんなプリント作るって聞いてないんだってば！！

「あんなふうに教頭先生が電話で言うくらいだったら、
　自分のクラスの役員に直接言ってくれればよかったのに」

って、
電話するなんて思いもしなかったよ！！知ってたら電話する前に止めたわよ！！

言われるままに我慢。

他の先生の名前は一言も出さずわたしの名前だけ出したのは、
若くて（文句は言わないしPにも若気の至りだと思わせることができる）
もうすぐいなくなるからだ。


そんなことを思いながらトイレで泣きました。
　
　
　
　
残る同期には悪いけど、
こんなとこ、辞めて良かったよ。